ありがとうございました。

ドラッグストアやコンビニからマスクが消え始めた頃、長年医療材料や衛生用品の注文をお願いしている会社から、当面マスクや消毒液などの注文は受け付けられない旨のFAXが届きました。その時点で、診療所にはせいぜい2か月分くらいの在庫しかなかったため、急いで他の会社も当たってみましたが、全て断られてしまいました。その頃は、テレビや新聞を見ても、大学病院や救急病院でさえ、マスクや消毒液が調達できずに困っているというニュースばかりだったので、とうてい町の小さな診療所に回す余裕はないだろうと、半ば諦め、とりあえず今あるもので何とかしのいでいこうと覚悟を決めました。

そんな時、時々立ち寄るカフェのマスターから、「マスクがなくて困っていませんか?」と声を掛けられ、「実は・・・」という話をすると、数日後に「ドラッグストアを回って何とか2箱買うことができたので」と言って、たまたまカフェの前を通りかかった私を呼び止めて、忙しい中走り回って買ってきた貴重なマスクを、惜しげもなく渡してくださいました。また、カフェの常連さんたちに当院の話をしたところ、「当分外出しないから」「自分は布のマスクで充分だから」などと言って、皆さんが家から持ち寄ってくれたという様々な形のマスクが入った紙袋もくださいました。

さらに、近所の薬局に立ち寄った際、顔見知りの薬局のオーナー夫人と「マスクがなくて困りましたね」などという会話をしたところ、「数年前に購入した医療用マスクで、細部に劣化が見られるので破棄しようと思っていたものがあるんですけど、本当にひっ迫した時には何かの足しになるかもしれないので、良かったらお持ちになりますか?」と言って、奥から何箱ものマスクを出してきてくださいました。

このように皆さまのお力添えのお蔭で、私たちはマスク不足で困ることなく、診療を続けることができました。それ以上に、皆さまからいただいた温かいご支援は、日々の診療を頑張るためのエネルギーになりました。

この地に開業して本当に良かったなと、しみじみ思っています。

どうもありがとうございました。心よりお礼を申し上げます。

 

 

このところ、東京都では再び感染者が増えてきているようです。皆さまも気を抜くことなく、コロナに感染しないようくれぐれもお気をつけください。

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ごめんあそばせ

先生と二人で訪問診療をしていた時のことです。大通りに出てタクシーを拾おうとしていたら、犬を連れた中年の女性が通りかかりました。その犬が、何とも言えない気のよさそうな顔つきをしてこちらを見ているので、思わず小さく手を振ると、「あなた、小池百合子さんにそっくりね」と、犬の飼い主から突然声を掛けられました。さらに、「よく言われるでしょう?」と聞かれ、「いえ、そんなこと言われたのは初めてです」と答えると、「あら、そっくりよ。私、小池さんのファンなの」と、私の困惑などお構いなしに話を続けます。似ているとは言っても、マスクを掛けているため、殆ど目と髪型限定ですし、往来で人目もあり、ちょっと恥ずかしくなったので、「ずいぶんご機嫌なワンちゃんですね」とワンちゃんに話を振ると、「そうなの。いつもこんな感じ。私はいつも不機嫌だけど」と不思議な言葉を残して去って行きました。

そこへちょうどタクシーがやって来たので、乗り込んでほっとしたのもつかの間、タクシーの運転手さんが、唐突に「私、二年前まで防衛省に勤務しておりました」と言いました。(ん?どういうことかしら?何を言おうとしているのかしら?防衛省=運転技術が確かだという自慢?)などと、私の頭の中は?で一杯になり、どう話を継いでいって良いか分からぬまま、運転手さんのガタイが良かったので、取り敢えず「自衛隊ですか?」と尋ねると、妙に緊張した様子で、「はい。そうです」と答えました。その時、突然、私の頭の中に、防衛大臣だった頃自衛隊員を前にして話をしていた小池さんの姿が浮かびました。そういえば、謎の女性と別れたあと、ちょっと調子にのって、「今度誰かに『小池百合子です』と言ってみようかしら」などと先生に言いながらタクシーに乗り込んだことを思い出しました。あの「小池百合子です」というフレーズを耳にした運転手さんが勘違いしているに違いないと思いつき、「あの、私、小池百合子さんではありません」と言うと、案の定、「あ、そうですか。そっくりでいらしたもので」という答えが返ってきました。その途端、妙に張りつめていた車内の空気が緩んで、運転手さんの肩の力が抜けたように見えました。

それにしても、言葉で人に誤った先入観を与えてしまっただけでなく、誤解を解かなければ、何にもあずかり知らぬ小池さんにまでご迷惑をお掛けしてしまうところでした。

家族にその話をしたら、「そもそも小池さん本人が『小池百合子です』と言ってタクシーに乗って来るなんてありえないよね」と言われました。それもそうですが、他人が「小池百合子です」と言って乗って来ることは、もっとあり得ない気がします。家族にはこうも言われました。「大体良い年の大人は、そんな馬鹿なことはしないよね」

おっしゃる通りでございます。とにもかくにも、すべては私の不徳の致すところです。

みなさま、ごめんあそばせ。

 

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二人っきりの訪問診療

4月13日(月曜日)、出勤してきたスタッフを前に、院長が言いました。「明日はどうやら東京に緊急事態宣言が発令されるようです。そこで、少なくとも緊急事態宣言中は、皆さんに自宅待機をしていただき、夫婦二人でタクシーを使って訪問診療を続けようと思います。今日はせっかく来ていただきましたが、このまま帰宅して、こちらから連絡するまで自宅で待機していてください。」

スタッフに自宅待機してもらうという話は聞いていましたが、まさかその日から始めるとは思っていなかった私は、内心「えーっ!」と思いながらも、「お二人で大丈夫ですか?」と心配してくれるスタッフに、何とか笑顔を見せて見送りました。

そこから二人っきりの訪問診療が始まりました。診療に必要な筆記用具やカルテ、検査キットなど最低限のものを背中のリュックに詰め、片手には先生の往診バッグを持って、タクシーを捉まえる日々の始まりです。お昼には、お弁当を買って診療所に戻り、昼食後に再びタクシーで患者さんの家に向かいました。中野方面の診療の日は、お昼に診療所に戻ることができないため、小さなお団子屋さんでお稲荷さんを買って、近くの神社のベンチでいただきました。神社を見下ろせる位置に建っているマンションで自粛生活をしていた方が、そんな私たちの姿を見たら、神社でピクニックをしている暢気な年配の夫婦がいると思ったかもしれません。

患者さん宅は、たいてい住宅街にあるため、タクシーを拾うのは容易ではありません。しかも、緊急事態宣言中で走っているタクシーの台数が半分以下になっていたために、東京無線に電話して迎えに来てもらうこともしばしばでした。そんなに苦労してまで1回1回タクシーを乗り捨てたのは、一人の人との濃厚接触を避けるためです。また、手は絶えず消毒したり洗ったりしているために、すっかり油分が抜けてカサカサになってしまいました。

5月の連休明けを目標に頑張りましたが、連休が明けても緊急事態宣言が解除されなかったので、あとどれくらい頑張れるかと自分の体力に不安を感じたこともありました。しかし、生来が楽天的なために、「今日は何のお弁当にしようかな。」「今日はどんな運転手さんに会えるかな」などと結構毎日楽しみを見つけながら、5月25日の解除の日まで何とか元気に続けることができました。

 

東京無線さんには大変お世話になりました。また、医療機関の人間だと分かっていても嫌な顔をせず乗せてくださったドライバーの皆さま、本当にありがとうございました。

この間、訪問時間がずれたり、電話での対応になってしまったりと、何人かの患者さんにはご迷惑をお掛けしてしまいました。申し訳ありませんでした。

 

困ったことに、6月に入っても、タクシーを見かけると空車かどうか確認せずにはいられない、変な癖がついてしまいました。しかも、「空車」という赤い文字を見ると、一瞬胸がときめいてしまいます。うちの先生は、「緊急事態宣言の後遺症だね」などと言って、暢気に笑っていますが、後遺症というよりはトラウマではないかしらと思うこの頃です。

日めくりはあと2枚

令和元年も幕を閉じようとしています。

みなさまにとって今年はどんな一年だったでしょうか?

年号が平成から令和に替わった今年、私どもは開院15周年目を迎え、11月にささやかな感謝の会を催しました。開院当初お世話になった方や、スタッフのご家族にも参加していただき、想い出深い会となりました。このように長年に渡って診療を続けられるのも、支えて下さる皆様のおかげと、ありがたさで胸が一杯になりました。

 

年末にあたり、今年帰幽されたみなさまのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

ご家族を亡くされて、おひとりでお正月を迎えるみなさまには、どうしていらっしゃるかなと思いを馳せながら、気持ちだけ寄り添わせていただきます。

在宅で療養中のみなさま、介護を継続中のご家族のみなさま、今年も一年お疲れ様でした。

来年がみなさまにとって実り多い年となりますよう、心から願っております。

どうぞ佳いお歳をお迎えくださいませ。

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第6回実務講座を開催しました!

10月15日(火曜日)に第6回実務講座を開催しました。久し振りのウェルファーム杉並です。4階の会場の窓からは、今日もスカイツリーがよく見えます。

今回は「認知症に伴う摂食機能障害ー評価のポイントと対策」というテーマで、言語聴覚士の濱谷葉子氏を講師にお招きしてお話していただきました。

認知症が進むと、食事に関して様々な問題が出ることがあります。

「最近ご飯を目の前にしても食べようとしないんです」「ご飯やおかずを口の中に溜めこんで、飲み込まないんです」「箸やフォークで食べ物をつつきまわしてばかりで、ちっとも食べようとしないんです」などなど、食事に関する家族からの訴えは多く、楽しいはずの食事の時間が患者さんとご家族にとってストレスになってしまうこともあります。

これらは周辺症状(BPSD)と呼ばれるもので、認知症の人すべてに起きるわけではありません。

濱谷講師は、認知症の原因疾患別の症状と摂食・嚥下障害の特徴などについてもお話しくださいました。認知症の代表的な疾患として、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症及び前頭側頭型認知症の四つが挙げられ、それぞれについて摂食・嚥下障害の特徴などの説明がありました。このうちアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症は脳の萎縮部位が異なるため、周辺症状に違いが出るとのことでした。今患者さんがとっている行動の根拠を知り、病気に対する理解を深めることは、患者さんの気持に寄り添うためにも必要なことだと感じました。

また、摂食・嚥下障害が急に現われたり、今までになかった症状が現われた時は、他の疾患も疑われるため、注意が必要とのことでした。さら現在服用している薬の影響も考えられるため、何でも認知症のせいにしないで医師に相談してみることも大切だと思いました。

それから、何と言っても食事の時間を難行・苦行の時間にしないための工夫は欠かせません。怖い顔をした家族が「はい、ちゃんと食べて。食べなきゃ死んじゃうわよ。」などと言いながら食事を促したり、殺風景な食卓で誤嚥をしないかと心配するあまり真剣な表情の家族に見守られながら食事をしたりするのでは、楽しい時間とは言い難いものがあります。

先日、よく晴れた暖かい日に、公園のベンチで老夫婦が手作りのお弁当を食べているのを見かけました。ご主人は車椅子に座っていましたが、穏やかに言葉を交わしながら、楽しそうにお弁当を食べていらっしゃいました。多分奥様はご主人の介護で大変な毎日だろうと想像できましたが、日々の生活の中にもこんな風にちょっとした楽しみを作ることができるのだと感心しました。もっと小さなことでも、たとえば食事の時間に好きな音楽を流したり、食卓に花を飾ったり、家族が笑顔を見せるように心がけるだけでも、患者さんのQOL(生活の質)は上がると思います。それが結果的に食事の時間を楽しい時間に替えるはずです。

1日に必要なカロリーや必要な水分摂取量などに捉われたり、何とか自分で食べさせることにこだわっていると、本人も家族も疲弊してしまいます。本人にとって、安全な経口摂取の目安や限界となる時期や状態等が把握されていれば、体力が落ち切る前に別の手段が講じられ、楽しく安全な経口摂取を持続することにつながるというのが今回のお話の締めくくりでした。

濱谷葉子先生、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

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夏の夜○○に遭遇

今年の夏も暑かったですね。今年は梅雨が長くて7月でも肌寒いような日があったため、余計に暑さを感じたのかも知れません。

犬は暑さに弱いので、夜遅くならないと散歩に連れて行くことができません。夜の8時頃、試しにアスファルトに素足をのせてみると、まだじわっとした熱を感じます。そのためか、散歩が大好きな我が家の愛犬も、夏の間は余り遠くへ行きたがりません。

でも蒸し暑い空気に包まれて歩いていても、さらさら流れる川の音を聞きながら、煌々とした月を眺めるのは楽しい時間です。

ある夜も、いつものように涼しげな川の音を聞きながら歩いていると、川沿いの柵の向こう側に何か茶色いものが動くのが見えたような気がしました。目の錯覚かなと思っていると、今度ははっきりと茶色いモフモフしたものが柵の向こう側の石垣の上を、私たちと同じ方向に向かって移動しているのが見えました。「ネコかしら。ネコを見ると反射的に追いかけようとする(でもすぐに見失ってうろうろ探し回る)ドジなワンコを連れているので、困ったな。あっちへ行ってくれないかな。」と思った瞬間、柵の間からヌッと顔が出て、思わず目が合ってしまいました。それは、目がクリッとして鼻が長く突き出ている、まぎれもないハクビシンでした。しっかり目が合ったにもかかわらず、私を怖がるそぶりも見せず、柵からスルッと出て来ると、優雅な足取りで道を横切り、民家の塀を軽々跳び越えてどこかへ行ってしまいました。その間、我が家の犬は夢中でその辺りの地面の臭いを嗅いでいて、自分の後ろで起きた異変に全く気付きませんでした。野生とは程遠いワンコです。

散歩の途中でハクビシンに遭遇したのは、今回が2度目です。数年前に民家の間からスッと出てきて向かいのお寺の門の前にスクッと立って、こちらをじっと見ている動物がいました。ネコのような色をしているけれど、体も尻尾ももっと長くて、見たこともない顔立ちをしています。思わず、「あなたはだあれ?」と呼び掛けていました。すぐにお寺の中へ消えていきましたが、その時、ふと「あ、あれがハクビシンかも」と思い当たりました。

ハクビシンという動物の存在を知ったのは、昭和の終わりごろです。家族で泊った温泉旅館で、仲居さんが「旅館の庭に夜時々ハクビシンがやって来るんですよ。人の気配を感じるとすぐに逃げてしまうので、姿を見ることは難しいのですけれど。」と教えてくれました。インターネットもない時代です。ハクビシンに勝手に「白美神」という感じを当てはめて、白くて毛のふさふさした、気高さを感じさせるような動物を想像していました。

大学の図書館で司書をしている友人は、ある日、背中や手足に湿疹が出来たため、病院で診てもらったところ、動物についているダニが原因と言われたそうです。そう言われてもダニがいるような動物に全く心当たりがなかったため、職場の環境を調べてもらうことになりました。すると図書館の天井裏にハクビシンが巣を作り、その体についていたダニが、エアコンの吹き出し口からその真下にデスクがある友人をめがけて降ってきていたことが判明しました。手足に残る無数の湿疹の痕を眺めながら、「労災がきかないんだって・・・」と肩を落とす友人に、かける言葉もありませんでした。

今は、インターネットでハクビシンを検索すると、「ハクビシンの駆除ならお任せください」などという広告が出てきます。山の中にいる時は、めったにお目にかかることができない「深窓の令嬢」のような神秘的な存在だったのに、住宅地に現れるようになってからは、すっかり害獣になってしまったようです。

散歩から戻り、ハクビシンに遭遇した話をしながら、「でも、いつも犬を連れている時にハクビシンに会うのはどうしてかしら?」とつぶやくと、うちの先生が、「食べようと思っているんじゃないの」と言ったので、まさかと思いながらも、ちょっと怖くなりました。うちの先生は、時々しらっとした顔でギョッとするようなことを言う人です。

 

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第5回実務講座を開催しました

6月19日(水曜日)に第5回実務講座を開催しました。

今回のテーマは「ポジショニング」です。「ポジショニング」とは、寝たきりの患者さんや体に麻痺のある患者さんなど、自分で自由に寝返りをうつことができない方に対して行うものです。その目的は、主に①廃用症候群の予防(寝たきりの方に起りがちな褥瘡、拘縮、肺炎、浮腫、内臓機能の低下などの予防)、②日常生活のケア(おむつ交換、食事、口腔ケアなど)を行いやすくするため、そして③QOLの向上(苦痛や不眠を改善し、快適なベッド環境を目指すため)です。

ポジショニング自体は新しい考え方ではありませんが、今回は鈴木和浩理学療法士を講師にお招きして、最新のポジショニングの考え方と実践方法について教えていただきました。

実践のためにはベッドが必要となるため、会場は有料老人ホームライフステージ阿佐ヶ谷様にお願いして、部屋を貸していただくことになりました。

ベッド上で過ごす時間が長い患者さんにとって、体にかかる負担が少ない姿勢にしてあげることは、とても大切です。ポジショニングは、当院の院長も日頃から関心をもって勉強し、自ら患者さんに対して実践しています。ポジショニングに用いるのは、ご自宅にあるバスタオルやタオル、枕、クッションなどですが、その効果は絶大で、例えば、脳梗塞を発症してから右足を立てて寝るようになった患者さんに、バスタオルやクッションを組み合わせてポジショニングを行ったところ、右足を立てることはなくなり、「楽になった」とおっしゃっているのを目の当たりにしたこともありますし、眉間にシワを寄せて苦しそうな表情で寝ていた方が、ポジショニングをした後は穏やかな表情になったという報告を受けたこともあります。

鈴木講師は、体にかかる圧力を分散するために、なるべく広い面で支える、また体とマットレスの間に隙間を作らないなどの最新のポジショニングの考え方について、いくつかの具体例を示しながらお話ししてくださいました。

また、実践方法では、丸田さんにモデル(患者さん役)をお願いして、鈴木講師がタオルやクッションの正しい当て方を見せて下さいました。さらに、ポジショニングを行った時と、行っていない時の背中の筋肉の硬さの違いを実感してもらうため、参加者が順番に丸田さんの背中を指でプニプニ押す体験をさせていただきました。丸田さんの背中の筋肉の付き具合が、痩せ過ぎず太り過ぎずちょうどよかったためか、離れた所から見ていても、指で押した時の弾力の違いが分かりました。参加者のみなさんも、何度もプニプニ押しながら、「本当に全然違う」と驚いていました。丸田さんご本人も、ポジショニングを行ってもらった時は、普段重力なんて意識したことはないが、マットレスに当っている側には負担がかかっているのだと実感できたとおっしゃっていました。

ポジショニングは、正しく実践しないと効果が得られないので、少しでも参考になればと、参加者の皆様にはスマホでの写真撮影もしていただきました。

質問コーナーでは、今関っている患者さんにどのようなポジショニングを行なったら良いかという具体的な相談もあり、少しでも患者さんを楽にしてあげたいという、皆さまの熱意に心を打たれる思いでした。ある参加者は、「目からうろこ」ならぬ「耳からうろこがとれました」と感想をおっしゃっていました。後日、実際に患者さんに実践しているというお話も聞こえてきて、講座がすこしでもお役にたてたなら何よりと喜んでいます。しかし、ポジショニングは患者さんに関る介護者や、医療者、ご家族など皆が同様に実践しないと意味がないので、もっと広めていく必要があると思っています。

鈴木講師には、機会があれば今度は「車椅子上のポジショニング」についてお話ししていただきたいと思っています。

お忙しい中、講師をお引き受け下さった鈴木先生、快く会場を貸してくださったライフステージ阿佐谷様、お仕事終わりにかけつけて下さった参加者の皆様、そして体を張ってモデルを務めて下さった丸田さん、本当にありがとうございました。

 

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日本昔話とサルコペニア

幼いころは、おとぎ話や昔話を聞くのが楽しくて、「むかしむかしあるところに・・・」というフレーズを聞くと、わくわくしたものです。

ところで、日本の昔話には、「むかしむかしあるところに おじいさんとおばあさんが住んでいました」という書き出しで始まる物語がいくつもあります。桃太郎に舌きりすずめ、かちかち山、かぐや姫など、どのお話にも最初におじいさんとおばあさんが登場します。西洋の物語には、おじいさんとおばあさんがいきなり登場するお話は、ほとんどありません。しかも、どのお話でも、おじいさんとおばあさんは、貧しくて、ごちそうを食べているわけでもないのに、毎日肉体労働をしていながら、とても元気です。

桃太郎に出てくるおじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行っていますし、舌きりすずめのおばあさんに至っては、大きいつづらを背負って歩いています。こぶとりじいさんは夜通し踊っていますし、花咲かじいさんは木に登っています。いずれも、ものすごい体力です。

絵本の中のおじいさんとおばあさんは、現代の80歳以上の感じで描かれていますが、良く考えると、昔話の設定が江戸時代よりもっと前だとすれば、その頃は多分寿命が50年くらいなので、おじいさんとおばあさんは、40代くらいだったのかもしれません。

実際、桃太郎は、当初おじいさんとおばあさんの間に生まれたこどもという設定だったと聞いたことがあります。

昔の日本では、人々は、米や芋・豆・野菜そして川魚などを食べ、日の出とともに起きて、一日中家事や畑仕事などの肉体労働をし、日が暮れれば寝る生活をしていました。おそらく骨粗鬆症などとは無縁の体だったことでしょう。手足には、筋肉もしっかりついていたに違いありません。当時は、体が生活するための道具だったのです。

しかし、現代は、文明が発達したおかげで、家電や機械が肉体にとって変わり、体は生活の道具としての機能を失くしていきました。その結果、寿命は延びたものの、骨粗鬆症のため骨折しやすくなったり、筋肉が衰えて歩行が困難になったりする高齢者が増えてしまいました。

筋肉量が減少し、筋力や歩行速度の低下が起きることを、「サルコペニア」と言います。サルコペニアの判定基準(AWGS)によれば、65歳以上の高齢者のうち、握力低下(男性26kg以下、女性18kg以下)または、歩行速度低下(0.8m/秒)があり、筋肉量の低下があれば、サルコペニアと判定されます。サルコペニアが進むと、転倒したり、歩行が困難になるなど、要介護状態になる危険性が高まります。

そうは言っても、自分で筋力の衰えを判定するのは難しいものです。でも、普段の生活の中で、例えば、今迄開けることのできたジャムの瓶のふたが開けられなくなったり、物を移動させようとして、しっかり掴んだつもりが滑り落ちてしまったり、マーケットまで歩いて10分で行けたのに、15分かかるようになったりすることで、筋力の衰えを実感することがあるのではないでしょうか?

多くの方は、「ピンピンコロリ」、つまり死ぬ瞬間まで元気に生活することを願っていますが、そのためには、日々の努力が必要です。神頼みだけでは、筋肉量は増えません。

偏食を避け、たんぱく質をしっかり摂って、適度に日を浴びて、適度に体を動かす(特に歩く)ことを毎日続けていれば、ピンピンコロリも夢ではないかもしれません。

私も、昔話の時代なら、とっくに死んでいる年齢です。皆さまに偉そうなことを言っている場合ではないですね。ピンピンコロリを目指して、しっかり実践して参りましょう。

 

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第2回家族会を開催しました

5月18日(土曜日)に第2回家族会を開催しました。

場所は、勉強会などですっかりお馴染となったウェルファーム杉並です。

今回は、出席を楽しみにしていたのに、患者さんが急に入院することになったり、留守番をしてくれる人が見付からなかったために、来られなくなった方がいらっしゃいました。前回の家族会で、友人と会う約束をしていても、患者さんの容態が悪くなったりしてキャンセルすることが多いので、予定を立てるのは難しいとおっしゃっていた方がいましたが、こうして現実を目の当たりにすると、日頃の皆様のご苦労が身にしみます。また、参加したくても、患者さんの重症度が高く、2~3時間もの間一人にしておけないという理由から来られない方もたくさんいらっしゃいます。どんな時でも、ご自身の都合より患者さんを優先する介護者のみなさんのお姿には、本当に頭が下がる思いです。

実は、多くの介護者の方が、ご自身も病を抱えています。今回の参加者の中には、骨折による腰痛に耐えながら、コルセットを巻いて介護をしているという方がいました。今迄にも、入院して手術をしたにも拘わらず、退院したその日から再びご家族の介護を始めた方を、何人も見て来ました。入院先の主治医からは、「この体で介護するなんて無茶だ」と言われながら、「それでも自分しか介護する人がいないから仕方ないよね。」と笑っていたMさんの顔を思い出すと、今でも切なくなります。ただ、ご自身の体調が悪くても、介護は待ったなしなので、我慢しながら生活しているうちに、取り返しがつかない状態になってしまうこともあります。どうぞご自身のお身体をくれぐれも大切にしてください。訪問診療の際にご相談いただければ、診察やアドバイスなど、出来る限りご協力させていただきます。

来る日も来る日も、病気のご家族の介護に追われる日々は、本当に大変だと思います。泣きたくなる日も、情けなくなる日も、逃げ出したくなる日もあることでしょう。私たちは、今迄に多くの方の涙を見、溢れ出る言葉を聞き、逃げ出したいと言う方に寄り添って来ましたが、それがさほどの助けになったとは思っていません。それは、私たちが介護をしている当事者ではないため、介護の苦労や苦しみを共有できないからです。

でも、介護をしている人同士なら、共通体験を通してお互いに分かり合える部分が多いですし、参考になる具体的な話を聞くこともできます。

家族会には、「介護者をひとりぼっちにしない」という主旨もあります。

ご自身の経験をおひとりずつ語っていただき、今困っていることや、将来に対する不安などを聴きながら、「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」という安心を感じた上で、他の人の経験談から得るもの、自分の経験から他の方に与えられるものを交換し合う場となることを目指しています。

また、今回は、特別企画として「もしバナゲーム」を体験していただきました。2月に開催されたACPの勉強会でも非常に好評で、今でもゲームの貸し出しが続いているほどです。

今回は、2つのグループに分かれて、自分の命が残り少なくなった時に大切にしたいこと、実現してほしいこと、しておきたいことなどが書かれたカードの中から、自分がもっとも大切だと思う3枚のカードを選んで、何故そのカードを選んだのかを最後に一人ずつ話してもらいました。最期は一人でいたくない、だから妻より先に死にたいという男性や最期は家族と一緒に過ごしたいという女性、最期までユーモアを忘れず笑っていたいから、痛みはとってほしいという女性など、それぞれの思いに耳を傾けながら、自分を振り返る良い機会となりました。普段、自分の死に方について具体的に考える機会は殆んどありませんが、このゲームでは、自分にとって大切なカードを次々に選んでいくため、気付かないうちに考えが深まっていきます。また、自分が選んだカードを見て、「私はこれを望んでいたんだ」ということを改めて知ることもできます。

ゲームの貸し出しは、常時行っておりますので、ご家族や職場で体験したいという方がいらっしゃいましたら、診療所へご連絡ください。

家族会にご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

 

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令和元年

風香る5月に改元となりました。

気持も新たに頑張りたいと思います。

とは言え、HとRを打ち間違えると大変な悲劇になってしまい、コンピューター相手に文句を言いながら、修正を重ねる日々です。

みなさま、令和も引き続きよろしくお願いいたします。