謹賀新年

あけましておめでとうございます。

本年もなにとぞよろしくお願いいたします。

 

お正月3が日は、お天気に恵まれました。昼間は爽やかな青空、日暮れには鮮やかな夕焼け、そして夜には冴え冴えとした星空を望むことができました。

今年1年、お正月の天気のように、心を曇らせることなく、晴れ晴れとした気持ちで過ごしたいと思います。不安、心配、怖れなどの負の感情は、心に雲を掛けてしまいます。「笑う門には福来る」と言うように、笑顔で雲を吹き飛ばしましょう。

皆様にとって佳い一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

 

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近喰診療所
(〒167-0052 東京都杉並区南荻窪4-35-20-301)

社会福祉士
相談員 近喰真由子

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TEL: 03-3333-4771 FAX: 03-5336-7855

Email: konjikishinryojo@ybb.ne.jp

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今年もお世話になりました

1月にはあんなに分厚かった日めくりカレンダーが、残り4枚になってしまいました。

来年は元号が変わり、○○元年となるのですね。昭和生まれの私は、3つの元号を生きることになります。何だか一気に歳をとったような気分です。

 

当診療所は、来年開院15年目を迎えます。思い返すと、山も谷もありましたが、多くの方に支えていただき、何とか続けて来ることが出来ました。

辛いことも、苦しいことも、人間として、また専門職として成長するためには、大切な経験だと思っています。

 

毎年、この時期になると、今年出会った方やお別れした方を思い浮かべます。

 

今年の11月には、往診に行った施設で、嬉しい出会いがありました。

院長が、患者さんの往診を終って振り向くと、後ろに数年前に亡くなった患者さんの娘さんが立っていて、「お久しぶりです」と、声を掛けられたそうです。

その方は、何年も自宅でお父様の介護をし続け、お父様を看取った時は、ご自身も60歳を過ぎていましたが、家でぼんやりしていても仕方がないと思い、介護士の資格を取ったのだそうです。そして、2年前からその施設で働いているとのことでした。娘さんは、診療に同行したスタッフに、「あら、あなたまだいたの?」と声を掛けたそうで、スタッフは、「相変わらずお元気そうです」と笑っていました。ストレートな物言いは健在のようですが、カラットした面倒見の良い方なので、みなさんから慕われているだろうなと思いながら、懐かしく温かい気持ちになりました。

 

在宅で何年もご家族を介護している人の中には、経験により専門職を上回るスキルや知識を身に着けている方がいます。ご家族を看取った後、あのスキルを生かせる場があると良いのにと、ずっと思っていました。何より、ご自身の経験から、介護する人の気持や、介護される人の気持がよく分かっているため、心を添わせる介護ができると思うのです。

大変な仕事を選び、人のために働く決断をした彼女の心意気に、心からエールを送ります。介護の現場でお会いするのが楽しみです。

 

 

年末にあたり、今年亡くなった方々のご冥福をお祈りいたします。

介護をなさったご家族の皆様、本当にお疲れ様でした。

 

現在在宅で療養中の皆様、入院中の皆様は、どうぞお大事になさってください。

ご家族の皆様もくれぐれもご自愛ください。

 

今年もお世話になりました。

みなさま、お健やかに佳い歳をお迎えくださいませ。

 

 

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「初めて」が2つの日

今回は、ちょっと格調高く、イギリスの詩人ワーズワースの話から始めます。と言っても、学生時代に学んだカビ臭い知識を、老化した頭の片隅から引っ張り出すので、正確ではないかもしれません。

ともあれ、ワーズワースは、「人はこども時代はイノセント(無垢)で自然と一体であるが、成長するとエクスペリエンス(経験)を経て、イノセンスは失われてしまう。しかし、その代り、哲学的思考を得るのだ」というようなことを言っていた人です。無垢というのは、汚れのないまっさらな状態です。幼い頃は、この世での経験が少なく、何もかもが初めてという新鮮な毎日です。

つまり、おとなになるということは、「初めて」のことが少なくなっていくことなのだと思います。だから毎日を退屈に感じたり、「今日はどんな日だった?」と聞かれても、「別に」とか、「いつもと同じ」などという答えが返って来るようになってしまうのです。

だからと言って、ワーズワースが言うように、哲学的思考を得ているかどうかは個人差があるでしょう。

 

ところで、おとなになっても、「初めて」のことに出会うと、こどもの頃のように無性に誰かに話したくなったりしませんか?

前置きが長くなりましたが、私は、先日「初めて」を一日に2回も経験し、ちょっとワクワクしたので、早速お話したいと思います。

 

ある日の夕方、犬の散歩をしていた時のことです。

学校帰りの小学校高学年くらいの外国人の少年が、3人で袋入りのスナック菓子を食べながら通りがかりました。その中の背の高い少年が、スナック菓子の袋を私に差し出して、「すみません。ぼくたち漢字が読めないので、この中に卵と豚肉が入っていないか見てくれませんか?」と言いました。(卵と豚肉を食べてはいけないということかしら。でも既に食べていたみたいだけど...)と思いながら、表示を見ると、中ほどに「ベーコン風味エキス」と書かれていました。「ベーコン風味って、ベーコンなのか、ベーコンじゃないのか...」とブツブツ言いながら悩んでいると、「それは何ですか?」と聞くので、「ベーコンは豚肉から作るのだけれど、ベーコン風味だから豚肉じゃないのかな」と答えながら尚も見て行くと、一番最後のカッコ書きの中に(豚肉を含む)と書いてありました。そこで、「卵は入っていないけど、豚肉は入っているみたい」と言うと、少年は、「そうですか。どうもありがとう」と言って、ちょっとがっかりしたような、でもやっぱりなと言うような顔をしました。少年たちは、浅黒い肌で彫の深い顔立ちをしているので、「ネパールの人?」と聞くと、「そうです」と答えました。そこで、「ネパール語で犬は何て言うの?」と尋ねると、「ククル」と教えてくれましたが、私の発音が悪いのか、3回くらい言い直されてしまいました。

実は、阿佐ヶ谷や荻窪にはネパール人が多く住んでいて、ネパール人学校もあり、スクールバスが走っています。街の中やバスなどでも多くのネパール人を見掛けますが、話をしたのはその日が初めてでした。何より日本語がとても上手で、驚きました。

でも、あの子たち、豚肉を食べても良かったのかしら。

 

その後、暗くなり始めた頃、川のほとりの道を歩いていると、少し先の公園の芝生の真ん中で、トレーナーとズボン姿の中年の女性が、空を見上げて立っているのが見えました。「あんなところで、一体何をしているんだろう」と思いながら、そばを通り掛かると、その女性が上を見上げたまま、突然「ほら見て、人工衛星よ」と言いました。それが、私に向けられた言葉なのかどうかを考える暇もなく、私も思わず空を見上げました。すると、小さな銀色のビーズのようなものが、ピカッ、ピカッと光りながら移動しているのが見えました。私が思わず、「へえ、あれが人工衛星なんだ」とつぶやくと、彼女は「すごいわねえ。1000キロも離れているのよ」と、また誰にともなく言いました。その間、顔はずっと空に向けたままでした。

そういえば、テレビで人工衛星が日本上空を通過する時間をインターネットで調べることが出来ると言っていたのを思い出し、家に帰って早速調べると、丁度その時間に日本上空を通過していたことが判りました。

見た目はどこにでもいそうな、普通のおばさんだったけど、彼女は一体何者なんだろうと思いながら、私に「初めて」の経験をくれた見知らぬ女性との出会いに感謝しました。

 

人との出会いは不思議ですね。

毎日の散歩の途中にも新しい出会いがあり、この歳になってもまだ、初めての経験ができるのです。他の人は、自分にとって「初めて」の宝庫です。

 

私は、この日以来、ネパール人と話をしたことがあり、人工衛星を見たことのあるおばさんになりました。

 

 

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自分の死に方について考えたことがありますか?

「終活」という言葉が生まれ、自分の持ち物を整理・処分したり、葬儀やお墓について自分の希望を書き記したりする人が増えているようです。でも、人生には段階があります。みんなが、ある日急にぽっくり死ぬわけではありません。多くの人がなるべく患わず、人に迷惑を掛けずに死にたいと願っていますが、歳をとると、殆んどの方が怪我をしたり病気になったりします。

平均寿命を過ぎ、人生が残り少なくなった頃、いわゆる人生の最終段階で、どんな医療やケアを受けたいかということについて、考えたり、家族で話し合ったりしたことはありますか?

ここで、「もちろんあります」と答える方は、少ないと思います。そもそもどんな病気になるか分からないし、その時受けられる医療・ケアにどんなものがあるのか想像もつかないという方が大多数ではないでしょうか。

一昔前なら、「すべて先生にお任せします」と、病院の医師に一任してしまう方もいました。でも、今は、本人や家族が医療やケア、死に場所に至るまで様々な選択を迫られます。突然具合が悪くなって、救急搬送された場合などは、余り考える時間もないまま、命に関る選択をしなければならないこともあるのです。本人に意識がない場合、人工呼吸器を装着するかしないか、家族で意見が分かれることもあり、家族は重い選択を迫られます。そんな時、普段から本人が「延命はしないでくれ」とか、逆に「どんな手段を使っても生きていたい」などと意志表明をしていれば、家族も本人の意向に沿った選択ができるのです。

そのための方法として、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)が推奨されています。

ACPとは、元気なうちに、前もって医療やケアについての計画を立てるという意味です。でも、将来の様々な不測の事態を想定して、1人で計画を立てるのは困難です。そこで、医療や介護の専門家を交えて話し合いが行われます。ここで大切なのは、話し合うプロセス(過程)と、本人による意志決定です。話し合いは何度も行い、一度決定したことを変更するのも自由です。あくまでも、本人の意志に沿った医療やケアを目指すのが目的だからです。また、ACPは、機械的に何かを選択するのではなく、本人の生や死に対する考え方、家族への思い、最期はどこで誰と過ごしたいかなどを含めた上で、終末期の医療・ケアについて考えるものです。

現在、約6割の方が、人生の最終段階における医療やケアについて家族と全く話し合ったことがないと回答しています。

しかし、命の危険が迫った状態になると、約7割の方が医療やケアなどを自分で決めたり、望みを人に伝えたりすることができなくなると言われています。

ですから、いざと言うとき自分が望む医療やケアを受けるためには、前もって話し合い、家族や周囲の人達と考えを共有しておくことが必要なのです。

ACPで使用される質問票の中には、末期ガンと宣告された場合、重い心臓病が進行して悪化した場合、認知症が進行した場合を想定して、どこで医療・ケアを受けたいか、どこで最期を迎えたいか、また考えられる医療処置について受けたいか、受けたくないかなどを選択する項目があります。

各々の病気についての知識がないと、選択するのは難しいかもしれませんが、医師や看護師、ケアマネージャーや介護士など、経験豊富な専門家の話を参考にしながら、想像力を働かせて考えてみませんか?

「まだ元気なのに、死について考えるなんて縁起でもない」とおっしゃるあなた。「立つ鳥跡を濁さず」という教えもある通り、自分の望みを周囲に伝えておくことは、大切な家族や友人などに命に関る選択を丸投げしないための、「愛」でもあるのです。

質問票の中には、こんな質問もあります。

試しにちょっと考えてみてください。

 

問:どこで最期を迎えたいかを考える際に、重要だと思うことはなんですか。(複数回答可)

  1. 信頼できる医師、看護師、介護職員などにみてもらうこと
  2. 自分がなじみのある場所にいること
  3. 家族等との十分な時間を過ごせること
  4. 自分らしくいられること
  5. 人間としての尊厳を保てること
  6. 体や心の苦痛なく過ごせること
  7. 不安がないこと
  8. 家族等の負担にならないこと
  9. 可能な限り長生きすること
  10. 積極的な医療を続けられるこ
  11. 経済的な負担が少ないこと
  12. どんなことでも相談できる窓口があること
  13. その他(                     )

いかがでしょうか?

複数選んだ方は、さらに、その中のどれが自分にとって1番大切かを選んでみてください。ご自身が選んだ内容を見れば、逆に「自分はこんな最期を迎えたいと思っているのだな」と思い知らされることもあるかもしれません。

 

来年の2月13日には、専門職の方向けにACPの勉強会を開催します。

ご興味のございます方は、当院までご連絡ください。

 

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タネ拾い

先日、自宅で本棚の整理をしていたら、本の間から子どもが小1の時の国語のテストが出てきました。テストの上段には、イラスト入りで、迷子になったヒヨコをお母さんが探しに行く話が書かれており、下段には物語の内容についての質問があります。ところがなんと、答えはペケばかり。第1問の「ヒヨコがいなくなって、おかあさんはなにをしましたか?」という問いには、「たまごをうんだ」と解答し、その後も物語を読まず、想像力だけで書いたと思われる珍解答が続き、最後の「ヒヨコはおとなになるとなにになりますか?」という問いには、大きな字で堂々と「まっちょひよこ」と書いてありました。これを見た瞬間、私の頭の中には筋肉質?の巨大なヒヨコが登場し、笑いが止まらなくなってしまいました。今後どんなに辛いことがあっても、これを見たら絶対わらってしまうという大粒の笑いのタネを見つけ、早速タネの箱にしまいました。

タネの箱には、様々な方からいただいた写真やカード、手紙や小物などが入っています。他の人にとっては何の意味もない物ばかりですが、どれも何かのタネなのです。うれしいタネ、楽しいタネ、切ないタネ、悲しいタネ、そして今回笑いのタネが加わりました。これから折に触れ、いろいろなタネの話をしていきたいと思います。

在宅介護をなさっているご家族と患者さんの毎日は、単調になりがちです。「毎日あまり変わったことがないので、お互い話すこともない」とおっしゃる方もいます。でも、せっかく家族が一緒にいられるのに、会話もないまま過ごしては勿体ない気がします。たまには、一緒にアルバムを眺めたり、古い手紙や年賀状などを読み返してみてはいかがでしょう。認知症のある方でも、昔の写真を見せて話しかければ、記憶がよみがえるかもしれません。「へえ」と驚くような話や、思わず笑ってしまうようなエピソードも聞けるかもしれません。

笑いのタネやびっくりのタネ。季節も秋ですし、ご自宅で患者さんとタネ拾いをしてみてはいかがでしょうか。

 

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事例検討会を開催しました

9月12日(水曜日)に、当院主催の事例検討会を開催しました。場所は、今回もウェルファーム杉並集会室です。集会室は4階にあるので、窓からは東京が見渡せます。スカイツリーも(爪楊枝くらいの大きさですが)、遠くにちゃんと見えています。

クリニックの主催で、他職種の方を集めて行う事例検討会は、あまり例がないかもしれません。今回ケアマネージャーさんを始め、看護師さん、PTさん、医療事務に関る方など多くの職種の方々がご参加くださいました。事例に関する質疑応答と、グループでの話し合いを行い、それぞれのグループから有意義なアドバイスをいただきました。みなさんが真剣に意見を述べ合っているのを拝見して、ありがたい気持ちでいっぱいになりました。

会の最後には、おまけとして、院長から病気についての解説がありました。今回のテーマは、「卵巣がん」です。卵巣がんは、自覚症状なしに進行するため、サイレントキラー(静かな殺し屋)と呼ばれているそうです。初潮が早い、閉経が遅い、妊娠しないなど、生理の期間が長いと発症のリスクが上がると言われているらしく、出席者の中でも、特に女性は熱心に聞いていらっしゃいました。

お忙しいところ、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。

 

 

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終戦記念日に想う

在宅の患者さんは、80代~90代の方がほとんどです。みなさん10代~20代のころに戦争を体験しています。今まで、戦地で銃撃され足に銃痕のある方や、大陸から命がけで日本に戻って来た方、広島で原爆に遭った方、シベリアに抑留されていた方など、壮絶な経験をなさった多くの方々にお会いしてきました。

戦争に行く前に料理人をしていた方は、シベリアに抑留されながらも、料理がソ連兵に気に入られ、ずっと料理番をさせられたので、生き延びることができたとおっしゃっていました。また、戦地で敵に見付からないように3日間も川に浸かった状態で潜んでいたという方もいました。ある女性の患者さんは、乳飲み子を抱いて引き揚げ船に乗り込む時、「もしこの子が船中で病気になったりしたら、海に投げ込むしかない」という悲愴な覚悟をしたそうです。

不思議なことに、認知症の方の中には、「朝ごはんは何を食べましたか?」という質問には答えられないのに、「戦争中はどこにいらっしゃいましたか?」という質問にはすらすらと答える方がいます。それは、戦争が忘れようにも忘れられないほど、心と身体に痛みを伴う過酷な体験だったためだと思われます。

 

私は、戦後10年以上経ってから生まれたので、戦争を体験していません。でも、幼い頃、上野公園で、戦争で手や足を失った兵隊さんたちが、道行く人からお金をもらっているのを見たことがあります。また母の兄や姉(私にとって伯父や伯母)の中には、戦争で亡くなった人がいます。生まれてからずっと、戦争を体験した方たちに囲まれて生きてきたため、私にとって戦争は他人事ではありません。

 

私の母方の伯父は、何年もシベリアに抑留されたのちに、奇跡的に生還してきた人です。でも、伯父は亡くなるまで、自ら戦争中の話をすることはありませんでした。ある時、私のドイツ人の友人が、両親とともに来日したことがありました。日光を観光したいと言うので、伯父に案内を頼み、伯父の運転で観光に出掛ける事になりました。もともと無口な上に、英語を話さない伯父が、後部座席のドイツ人一家の会話を聞いて、ぽつりと「あの人たちの言葉はロシア語に似ているな」と言いました。そこで、私は、彼等に「伯父があなたたちの話す言葉がロシア語に似ていると言っています」と言うと、友人は驚いて、「伯父さんはロシア語が分かるのか?」と尋ねました。そこで、伯父が数年の間シベリアに抑留されていたことを話すと、彼らはみな黙り込んでしまいました。実は、彼らは本当はチェコスロバキアの人たちで、1968年にチェコスロバキアにソビエトが侵攻して来た時、一家でドイツに亡命したのです。そのため、家族での会話はドイツ語ではなく、チェコ語だったのです。彼らが伯父の過去を聞いて、突然黙り込んでしまったので、私は何だか暗い空気になってしまったと慌てました。私が彼らだったら、「大変なご苦労をなさったのですね」などと、上辺だけの共感を示したかもしれません。でも、彼らは、沈黙により、もっと心の深い部分で伯父の受けた苦しみに寄り添ったのだと思います。そして、彼らが伯父の苦しみを理解できたということは、裏返せば、彼らの亡命もやはり命がけだったということになるのです。

 

学生時代に出会ったカトリックの神父様は、オーストリア人で、冗談ばかり言っていつも人を笑わせているような明るい方でした。でも、ある方から、神父様がもともとはチェコスロバキア人で、ソビエト軍が侵攻してきた時、国境の川を泳いでオーストリアに亡命したと聞きました。後年オーストリアを旅した時、あの川の向こう側がチェコスロバキアだと教えられ、その川幅の広さに愕然としました。神父様の笑顔の裏には、そんな壮絶な過去があるのか、人が抱える苦しみは表面からではとても分からないものだと思い知らされました。

 

戦争は、必ず痛みを伴います。たとえ身体が無事であっても、愛する人や懐かしい街並を失うこともあります。今まで私が出会った、戦争を経験したすべての人が、拭い去ることのできない痛みを抱えて生きています。

 

今日は終戦記念日。戦争が終わった日です。皆さまが経験した痛みに寄り添いながら、平和に感謝を捧げたいと思います。

後期高齢者医療被保険者証(保険証)が変わりました

平成30年8月1日(今月1日)から、お使いいただく保険証が、今までの藤色のものから、青竹色(緑色)に変わりました。

既に75歳以上の皆さまのお宅へ届いていると思いますので、ご確認、御提示のほど、よろしくお願いいたします。

今までお使いの藤色の保険証は、破棄するか、お住いの市町村の担当窓口にご返却ください。(郵送による返却も受け付けてくれます)

限度額適用・標準負担額減額認定証(減額認定証)の更新も8月1日です。減額認定証は、これまでと同じ白色です。月ごとの同一の医療機関等の窓口負担については、外来の1ヶ月の自己負担限度額は、区分Ⅰ、区分Ⅱの方ともに今まで通り8,000円になります。

 

*重要な変更点

平成30年8月診療分から、外来の1ヶ月の自己負担限度額が変わります。

自己負担割合が1割の方は、1ヶ月の自己負担額の上限が14,000円から18,000円に引き上げられました。

また、自己負担割合が3割の方については、今まで57,600円だった外来の1ヶ月の個人ごとの自己負担限度額はなくなりました。

ただ、医療費が決められた限度額を超えた場合は、高額療養費として、超えた額を広域連合が払い戻してくれます。さらに、1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)に支払った、後期高齢者医療制度の自己負担等の額と、介護保険の利用者負担額の合算額が、世帯で決められた自己負担限度額を超えるときは、申請して認められると、後期高齢者医療制度と介護保険それぞれの制度から超えた額が支給されます(高額介護合算療養費)。

決められた限度額や、制度の詳しい内容についてお知りになりたい方は、広域連合お問い合わせセンターもしくは、お住いの区の国保年金課にお問い合わせください。当院の患者さんは、診療所にご連絡いただいても結構です。ご不明な点、ご相談などございましたら、お気軽にご連絡くださいませ。

残暑厳しい折、皆さまくれぐれもご自愛ください。

 

 

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事例検討会

7月20日(金曜日)に、ケア24高円寺様主催の「事例検討会」が行われました。お招きを受けて、私も院長とともに出席させていただきました。

「事例検討会」とは、地域のケアマネージャーさんなどが、現在対応に苦慮していたり、また今後どのように支援していくべきか迷っている利用者様について相談し、会に参加した人たちが知恵を出しあう場です。

会には、地域の様々な事業所から、ケアマネージャー、看護師、PT、医師など多くの専門職の方が参加します。そして、医療や介護、また時には自身の体験を生かして家族の立場から、様々な意見を出し合い、より良い支援のためにはどうすれば良いか考えます。

一人で考えることには限界がありますが、多くの人たちにより色々な視点からアドバイスを受け、新しい視点を得て、幾つかの解決への道が相談者の目の前に開けるのを、今回目のあたりにしました。

近頃、福祉の分野でも「エビデンス・ベースド・プラクティス」という考え方が重要視されています。

「エビデンス・ベースド・プラクティス」とは、科学的実証に基づいた実践という意味で、「何となく」とか「感覚的に」などの行き当たりばったり的なものではなく、きちんとした根拠のある実践をすることを奨励するものです。

そうは言っても、相手が人間の場合、性格、考え方、環境などすべて異なりますから、Aさんにとって上手くいった支援方法がBさんでも成功するとは限りません。

しかし、支援する立場の人たちが、自分たちの経験した事例を、プロセス(経過)も含めてきちんと検証し、記録として残せば、その記録が集積したものがエビデンスとなります。

後に続く人たちは、困難な状況に直面した時、そうした記録の中から、似たような事例を見つけ出し、支援者が苦悩しながら支援方法を模索した足跡を辿ることができるのです。

こんな風に、「エビデンス」という無機質な単語にも、人間臭が感じられるのが、人間を相手にしている福祉の分野らしい気がします。

9月には、当院主催の事例検討会を開催する予定です。

 

 

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PEMって何?

前回、第2回実務講座開催のご報告のなかに、「PEM」という聞きなれない言葉が書いてあったと思います。

「PEM]とは、Protein energy malnutritonの頭文字です。つまり、タンパク質・エネルギーが欠乏して、栄養失調状態になっているという意味です。

 

院長の講義によると、PEMとは、

① 人間が生存するのに必要なタンパク質と、活動するためのエネルギーが不足した状態を指す。

② 血液検査中の血清アルブミン値は、タンパク質栄養状態の指標として評価・判定される。つまり、血清アルブミン値は、体内のタンパク質の栄養状態を表す。

③ 血清アルブミン値(正常範囲:4.0~5.0g/dl)が、3.5g/dlを下回ると、身体の貯蔵分である内臓タンパク質の減少が引き起こされる。

*具体的なイメージとしては、水がたっぷり溜まった貯水池を想像してください。水を栄養に置き換えると、PEMとは、水(栄養)がどんどん減って行き、貯水池が干上りそうになっている状態です。

 

では、PEMになるとどうなるのでしょうか?

① 廃用症候群(寝たきりの状態)

タンパク質により制御されている免疫機能が低下し、感染症に罹り易くなる。

不足するエネルギー源を補足するために、筋タンパク質が動員されていくた

め、筋肉量が減少し、筋力も低下する。

② 褥瘡(床擦れ)

筋肉量の減少により、骨突出が起り、褥瘡が出来易くなる。

③ 脱水

筋肉組織内の水分が減少する。加齢に伴い、腎機能も低下するため、水分や

ナトリウムの再吸収機能が低下する。

 

つまり、外から体に取り込まれるタンパク質が、エネルギーとして消費される量より少ないと、もともと体の中に蓄えてあるタンパク質を使わざるを得なくなるということです。そして、タンパク質は、筋肉の中に多く蓄えられているのです。

 

いかがですか? PEMについて、ご理解いただけたでしょうか?

皆さまも、血液検査をした際は、ご自身の血清アルブミン値を注意して見てくださいね。

 

 

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